富士スピードウェイ(FISCO)にモータースポーツの博物館ができたというので早速来訪。ある程度予想はしていましたが、中身は単なる「トヨタ」モータースポーツカー「展示室」で、期待外れ。
富士の裾野に作られたサーキット「富士スピードウェイ(FISCO)」に最近新しくホテルが作られ、さらにそのフロアの一部を使って「モータースポーツミュージアム」が設立されました。
FISCOといえば事実上日本最古の”本格的”4輪サーキットで、言わば日本のモータースポーツの聖地。そこに、そのまま「モータースポーツ」を題材にした博物館ということなので、期待半分、でも単なる「昔の車の展示場」じゃないといいなぁ、と懸念しつつ、行ってみることにしました。
純粋にクルマ好きなら楽しいかも
富士スピードウェイホテルの入口1Fからフロントがある3Fへ直接架かるエスカレータを囲む様に配されたモータースポーツ博物館。1Fは自動車とモータースポーツの始まりから日本の自動車メーカーがレースに取り組み始めるまでの「黎明期」、2FはラリーやF1,そして日本国内のGT選手権など今に至る各レース活動について「モータースポーツの技術が市販車を作る時代へ」と題して展示が行われています。
それほど広いスペースではありますが、モノクロ基調のシンプルなフロアの中に比較的余裕を持っていろいろなクルマが並べられています。チケット予約は日時指定なので、もしかしたら時間毎に人数制限を実施しているのかもしれませんが、それほど混み合ってもおらず(まぁ平日だったけど)、ゆっくりとそれぞれのクルマを見て回ることができます。
1Fの入口を入ってすぐに目に入るのが、馬無し馬車の様なクラシックカー。そこからだんだんと車高が低くなって、葉巻状に丸みを帯びていって、さらにむき出しだったタイヤが平べったい車体の中にしまわれて…と、時代の流れとともにカタチが変わっていったクルマを順に見て歩くことができます。
2Fはレースカテゴリ毎に場所が分かれており、特にバブル時代頃から現在まで、それぞれのレースカテゴリと時代でのシンボリックなモデル(ランエボ&インプやスカイライン&スープラなどなど)を懐かしく思いながら見て歩く人も多いのでは無いか、と思います。
展示は完全に「クルマ」がメインで、クルマ以外の展示は略皆無。説明パネルも控えめで、ジオラマや派手な動画を使った説明なども無いので、クルマのエクステリアをじっくり眺めたい人や、クルマを眺めることで自分自身の思い出に浸りたい様な人には安心して楽しめる空間になっています。
でも一度来れば充分
ただ私にはココは「モータースポーツカー展示室」であって「モータースポーツ博物館」には見えません。
各クルマには説明パネルがつけられているものの夫々はパラパラで、例えばどの様な工夫でクルマが変わっていったのか、というような大きな流れの変化とか、モータースポーツが持つ社会的意義やその成果などの説明がほとんど無いのがとても残念です。
あるいは2Fは「モータースポーツの技術が市販車を作る時代へ」と題していますが、では具体的に何を狙って、どんな取り組みが成されて、またその結果どの様な技術や価値が市販車や社会へ還元されたのか、などの大局的な説明は全く無くて、ただの「お題目」にとどまってしまっている様に思います。
またもう一つ残念なのは展示車両が「トヨタ・スバル・マツダ」に偏っていること。まぁ、そもそもレース車は台数が少なくてどのメーカーにとっても貴重品である一方で、(明示的に名称には含まれないものの)トヨタが所有する博物館なので車両に偏りが生じてしまうのはやむを得ないとは思います。でもやはり日本でF-1と言えばホンダだし、GTではR32 GT-Rは外せないはずなのに、それらの代わりにトヨタF-1やスープラが置いてある、というのはなんとも残念、ガッカリしてしまいます。
結果的に「手に入るクルマ」を並べて説明文を加えました、という感じに見えてしまって仕方が無く、クルマそのもの以外の展示や解説に乏しいこととも相まって、やはり私には「トヨタのモータースポーツカー展示室」としか思えませんでした。
もちろん各メーカー毎に自社の車両や技術を展示・公開する場はあって良いと思います。でもその様な設備には、誤解を避けるためにその会社の名前をきちんと付した上で展示内容もその会社に関わるものを中心にして欲しいなぁ、と思います。
またその一方で、歴史的背景含めて自動車は日本の重要な産業で、またモータースポーツはその技術促進に重要な意義を持っていたものだと思うので、ぜひJAF,JARIなどの中立機関が中心となって、真の「モータースポーツ」または「自動車」「博物館」を実現してくれるといいのになぁ、と深く思います。
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