視察船新東京丸(★★☆,竹芝)

水のある風景

 東京~神奈川周辺の企業ミュージアムや工場見学を探しているうちに「東京港内を船で1周する無料の見学コース」があることを知り、申込み。例えばデッキに出て海風を楽しむという様なエンタメ的自由度は皆無ですが、1時間余たっぷり解説付きで東京港クルージングを堪能してきました。

 この船は東京都港湾局が運行している「視察船 新東京丸」というもので、竹芝小型船ターミナルを起点にレインボーブリッジなどをくぐって羽田沖まで東京港を南下した後、東京ゲートブリッジをくぐりながら中央防波堤外側埋め立て処分場の「島」を反時計回りに一周した後、お台場の方へ戻っていくというコースで運行しています。
 再び竹芝まで戻るものと、途中の青海客船ターミナル止まりの2種あって、今回私が乗ったのは後者。

 朝集合場所へ行くと、ベテランの集団が。町内会か何かで普段はハイキングとかしている様な感じの集まりで、今回は団体として申し込んだ様。他には海外からのお客様を連れたビジネスっぽいグループや仲良さそうな老夫婦など、参加者は雑多。

 新東京丸は総トン数200トンほど、全長32mほどの船で、メインキャビンは後面を除く3/4周を大きなガラス窓に囲われ、中央の大きな円卓を椅子が2重に取り囲む会議室イメージ(まぁ、正確にはキャビン中央の大きなテーブルを30脚ほどの椅子が取り囲み、その周りをさらにガラス窓沿いに折り畳みの椅子が30脚ほど並べられている)。参加者は全員この部屋にいなければならず、デッキに出ることは不可で、また事実上(そんなに広くないので)部屋内を歩き回ることもできず、最初に座った椅子に終始座ったまま説明を聞き、外をながめるというスタイル(従って写真を撮りたい人は窓沿いの折り畳みいすを選ぶべし)。

 そもそも「視察船」という名前が示す通り、この船は「東京港を視察する/見学する/勉強する」ために運行されており、「見物」や「観光」ではないし、従って船内の飲食はもちろん、過度の雑談もNG。明らかに東京都港湾局OBと思われる説明員が1時間以上にわたってビッシリ語ってくれる説明を真剣に聞きながら、要所々々で記録用の写真を静かに(極力動き回らずに)撮る、というのが求められている正しい姿(の様)です。

 ただしコース上からの景色はレインボーブリッジと東京ゲートブリッジを下から、とか、沖合展開で多摩川からの流れを妨げない様に宙に浮く様に作られた羽田のD滑走路とか、東京オリンピックに向けて急速に整備が進められている埋立地などなど見所満載。説明員が「東京港で運行している多くの有料遊覧船/観光船から、無料の視察船は営業妨害だ、と言われる(笑)が、正しく港湾業務を理解してもらうために無料で運行しているものなので、しっかり勉強していってください」と話されるのも尤も、と思えるほどの充実ぶりです。

 また改めて海側から眺めてみると、東京港は緑地化された部分と埋め立て中のエリアを除くと本当に隅々まで港湾施設に埋め尽くされていることを実感。またその大半は「コンテナ」の荷扱いで、海岸に積み上げられたコンテナの山とそれを扱う巨大なクレーンもさることながら、あんなに高く積んで大丈夫なのか(ひっくり返らないのか?!)と思える高さまでコンテナを積み上げたコンテナ船の迫力は息をのむほど(どの船も舷側から積み上がっているコンテナの高さは、喫水から舷側の高さの倍以上ありそう!)。

 朝起きた時は「抜けるような晴天でラッキー!」と思ったのですが、その後ぐんぐんと気温が上がって出航時間の頃にはちょっとした小春日和の雰囲気。おかげで水蒸気があがってしまい、「冬の晴天」ならぬ「春霞」で数々の被写体が総崩れ状態に。またデッキに出ることができないため全ての写真はガラス窓越しとならざるを得ず、映り込み回避にも一苦労(結局ほとんど回避できず)。

 そんな感じで「写真をちゃんと撮りたい」人はデッキに出られる観光船の方がお勧めかもしれないけれど、しっかりした説明付で手軽に港内を楽しめる(違った)学べる貴重な取り組み。東京港は季節によってまた違う表情を見せてくれそうだし、増してやオリンピックに向けてさらに開発が進んでいくはずなので、ぜひタイミングをズラしてまた来てみたいと思います。

hisashi

hisashi

長年の間にあちこちの引き出しに少しずつ溜まったガラクタを ただただ、適当にひっくり返して並べてみました。

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