釜石鵜住居復興スタジアム(★☆☆,釜石)

お出かけ

 ラグビーW杯開催会場の一つになったことで一躍有名になった「釜石鵜住居復興スタジアム」。3.11の洪水被災跡に作られ、またW杯ゲームの時だけ特設スタンドを用意して収容人数を稼いだ、という経緯に惹かれて、実際に行ってきました。

 かつては「前人未到の7連覇」を達成した釜石ラグビーですが、国内製鉄不況のあおりもあって徐々に低迷し、企業チームとしては解散してクラブチームになったのが約20年前。それから10年経ってなんとかトップリーグに手が届くか、という時に地域を襲った3.11。
 津波で全壊となった中学校・小学校跡地の復興にあたって「ラグビー場を作ってW杯の試合を誘致しよう!」でまとまったあたりはさすが釜石。ですが誘致した2試合の内、2試合目が大型台風による水害のため中止となり、その復旧作業を出場チームメンバーがボランティアとして参加した、というのも何か因縁を感じさせます。
 実際に行ってみると、スタジアムがある場所はリアス式海岸特有の地形のおかげで険しい山襞に隠されている様でいて、でもビックリするほど海と川が近くて海抜僅か数メートル程に思える完全フラットな土地。海の方を見ると巨大な堤防が聳えおり、それだけのものが必要となる規模の事象が当時起きたのだろうなぁ、と改めて想起されます。

 そしてそんな土地に作られたスタジアムの構造も、なかなかユニーク。
 ここ釜石鵜住居復興スタジアムの観客席は、メインスタンド側・バックスタンド側の2面だけ。略コンクリート打ちっぱなしのスタンド席が地面から直接盛り上がる様に作られており、左右インゴール側はそのまま真っ平の吹き抜け状態。メインスタンド側の一部には屋根が張出し、放送ブースやVIP席と思われる個室や選手の控室も作られている様ですが、バックスタンド側は座席のみ、という非常にシンプルな構造です。
 また売店などはありません(そのかわりにインゴールから続く芝生の端にキッチンカーやテント店舗が並び、グッズや名物を使った軽食類などが売られていました)し、それどころか観客用のゲートすらない(一応チケット捥ぎりのテントはあったけど)徹底ぶり。
 ちょっとシンプルすぎる気もしますが、W杯以後の日常的なキャパも考慮してく節約しながら仕上げたのだろうなぁ、という工夫の跡が見て取れます。さすがにW杯ではこれでは座席が不足するため、メイン・バックスタンド双方後方と両インゴール裏に仮設スタンドが拡張されていたそうですが、今はそれらも撤去され、両インゴール内にはその土台となったらしき三日月状の盛り土が僅かに残り、当時を偲ばせていました。

 また面白い工夫として、インゴール裏芝生上には「先着10組のBBQ席」が用意され、地元の幸を楽しみながら観戦できるサービスをやっていました(実は偶然、前の夜立ち寄ったファミレスの隣テーブルに釜石SW関係者がいて「明日はBBQ対応だぁ」と話していたのが聞こえていました)。ちょっといいな、と思ったのですが(海産物が美味しそうだし)、グランドレベルのインゴール側からはさすがに試合が見にくく、また当日はかなり風が強く吹きつけていたこともあってか、客は僅か4~5組ほど。ちょっと工夫が必要そうです。

 試合(ちなみに対コカコーラ)はお互いにそこそこ点をとりあって24-24の引き分けで終了。試合中にはバックスタンドに陣取った地元応援団が大漁旗を振り回しながら応援し続けていて、また試合後はユニフォーム姿のままで選手が外に出てきて地元の人達や家族・知人との交流が行われており、さすが地域密着のクラブチームならではの雰囲気になっていました。
 W杯では各選手が皆口を揃えて「(ラグビーのためにいろいろなものを)犠牲にしてきた」と言っていましたが、ここ釜石でも多くの人達がいろいろなものを犠牲にしてきた、と思います。まだW杯の熱狂の余韻が残っている段階だと思いますし、また次にあのレベルまでこの地が盛り上がるのは幾分先になってしまうとも思いますが、ラグビー自体は間違いなく根付いている街だと思うので、花火の様に終わってしまうのではなくこのまま続いていくといいなぁ、と感じました(全くの第三者の立場ではありますが)。

hisashi

hisashi

長年の間にあちこちの引き出しに少しずつ溜まったガラクタを ただただ、適当にひっくり返して並べてみました。

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